研究室専用

研究内容

【宇宙機のプラズマ干渉解析による宇宙機の信頼性評価】

地上実験および数値シミュレーションによるプラズマ解析技術を応用し,宇宙機と宇宙機周辺プラズマ(宇宙環境やプラズマロケットに起因するプラズマ)との電気的・機械的な干渉現象を解析・評価する手法の開発と,これらによる宇宙機の信頼性評価に関する研究を行っています.

電気的干渉では,宇宙機帯電解析(宇宙機表面へのイオン・電子の流入や,宇宙機とその周辺電位の解析)から,軌道上で運用される宇宙機の太陽電池など電源システムの健全性を評価します.機械的干渉では,宇宙機表面へのイオン衝突現象の解析から,宇宙機に多用される機能性薄膜材料の劣化等を評価します.また,発生する微小トルクを解析し,軌道上で発生する宇宙機の擾乱を予測します.

近年は,プラズマロケット搭載宇宙機を対象として,これらの研究を推進しています.宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同研究では,小惑星探査機「はやぶさ2」の運用で実測された,プラズマロケット運転に伴う探査機表面の損耗現象の解明を進めています.また,国内衛星メーカとの共同研究では,開発した数値シミュレーションツールをつかって,大出力プラズマロケットを搭載した次世代大型静止衛星のロケット配置など,衛星の設計寿命を向上させる衛星の最適設計に貢献しています.

①:地上実験施設におけるプラズマロケット(イオンエンジン)運転実験のようす

②:逆流イオンエネルギー分布測定結果:プラズマロケット放出プラズマ電位分布測定結果(中心下方領域)

③:数値シミュレーション:衛星モデル

④:数値シミュレーション:衛星モデルとプラズマロケット(ホールスラスタ)放出プラズマ

⑤:数値シミュレーション:衛星モデルの表面損耗解析例

⑥数値シミュレーション:衛星モデルの表面損耗解析例

【スペースデブリ除去技術の開発】

近年,地球周回軌道上に存在する運用後の人工衛星やロケットなどの,「スペースデブリ(宇宙ゴミ)」が,宇宙活動の持続可能性を脅かす問題となりつつあります.日本でもJAXAを中心にデブリ除去技術の開発研究が進められていますが,その主要技術のひとつは,デブリの軌道遷移技術(減速装置)の開発です.本研究室では,簡便かつ低コストに運用できる,帯電薄膜と宇宙環境プラズマとの静電的相互作用を応用した減速装置の開発研究を行っています.現在は,実機開発に向けた要素研究を進めており,本装置が発生する抗力評価と電圧印加手法の最適化を進めています.

①:減速装置概念図:帯電薄膜によるイオン抗力増大装置

②:帯電薄膜(断面)周辺のプラズマ挙動解析結果

③:地上実験による帯電薄膜モデルの抗力増倍原理の検証

【プラズマ環境実験装置の開発】

宇宙機のプラズマ干渉現象解明のために,宇宙機周辺のプラズマ環境を再現する地上実験装置の開発および改良を行っています.地球周回軌道上の宇宙プラズマ環境再現のため,プラズマロケットを応用した高電離度かつ流れのあるプラズマ生成を実現するプラズマ源の開発を進めています.この実験装置をつかって,宇宙機のスケールモデルや実機搭載部材等とプラズマとの電気的・機械的干渉現象を検証することができます.また,プラズマパラメータ取得のため,各種プローブの開発研究も行っています.現在は,イオン衝突に起因する宇宙機表面損耗現象解明のため,イオンエネルギーアナライザの高精度化に注力しています.

①:プラズマ環境を再現する真空槽外観

②:真空槽内に設置した自作プラズマ源の外観

③:同プラズマ源の点火実験の様子

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